GBT(Guided Biofilm Therapy)の本質|GBT Compass~世界共通の8ステップをSDAトレーナーから学ぶ~Part.1

こんにちは!TOMOE DENTAL CLINICのアンナ先生です。
最近よく耳にする「エアフロー」という言葉
「GBTって何ですか?」
「エアフローで歯をきれいにすることですよね?」
最近、歯科医院のホームページやSNSで「GBT」や「エアフロー」という言葉を目にする機会が増えてきました。
歯を「治す」だけではなく、できるだけ病気になる前に「守る」。
そんな予防歯科への関心が高まっていることは、歯科医療に携わる者として、とても嬉しいことです。
一方で、GBTを学び、実践し、そして現在はSDA TrainerとしてGBTを伝える立場にいる私には、どうしても皆さんに知っていただきたいことがあります。
それは、
GBTは、エアフローを使ったクリーニングの名前ではありません。
ということ。
そしてもう一つ。
「エアフロー」という言葉も、正しく理解していただきたい。
ということです。
今回は、GBTを理解するために欠かせない「GBT Compass(GBTコンパス)」を中心に、GBTの8つのステップと、私がSDA Trainerとして大切にしている「正しく伝える」ということについてお話しします。
・エアフローという言葉の真髄に近づいてみたい
・エアフローって普段何気なく使っているけどよくわかっていない
・患者さんにGBTについて詳しくお伝えできていない
と思う方はぜひ最後まで読んでみてください。
GBT Compass――GBTを導く「羅針盤」
こちらが、GBTを理解するうえで欠かすことのできない
GBT Compass(GBTコンパス)です。
こちらがオリジナルの英語バージョンです。

中央には、
GUIDED BIOFILM THERAPY
その周囲を、01〜08の8つのステップが取り囲んでいます。
GBTとは、EMSが大学や歯科医療従事者との共同研究を通じて開発してきた、8ステップからなるプロトコルです。
そして現在、世界各国のGBT認定クリニックで、このプロトコルをもとにGBTが実践されています。
つまり、この8つのステップは、
世界中のGBTをつなぐ共通言語
ともいえるものです。
私はこのGBT Compassを、
「GBTを正しく行うための羅針盤」
だと考えています。
すでに英語がたくさん出てきて衝撃波をくらってしまった方は、ちゃんとオリジナルの日本語Verがありますので、こちらを参考にしてみてください。(ほっと一安心)

そもそもGBTの「Biofilm」とは?
GBTは、
Guided Biofilm Therapy
の略です。
名前の中にある「Biofilm」。
これがGBTを理解するうえで、とても重要です。
歯の表面に付着しているプラークは、単なる食べかすではありません。
細菌が集まり、歯の表面などに付着して形成される複雑な微生物の集合体です。
このバイオフィルムが、う蝕や歯周病など、お口の中のさまざまな問題と深く関係しています。
だからGBTでは、
「歯石を取る」「クリーニングして歯をきれいにする」
だけではなく、
「バイオフィルムをどう評価し、どうコントロールするか」
という視点を中心に置きます。
ここがGBTの本質だと考えています。
GBT Compass 8つのステップを知る
ここで改めて、現在のGBT Compassに示されている8つのステップを見ていきましょう。
GBTは、単にAIRFLOW®を使ってバイオフィルムを除去する処置ではありません。
診査をするところから始まり、患者さんへの動機づけ、バイオフィルムの除去、歯石があれば歯石の除去、確認、そして次回のリコール予約へ。
この一連の流れが、GBTという一つのプロトコルになっています。
01 ASSESS AND INFECTION CONTROL|まず「診る」。そして感染管理から始める。
最初のステップは、
ASSESS AND INFECTION CONTROL
です。
GBTは、いきなり機器を使うところから始まりません。
まず、患者さんのお口の状態を診査します。
歯の状態。
歯肉の状態。
バイオフィルム。
歯石。
補綴物。
インプラント。
もちろん歯周病やむし歯の診断をするにはレントゲン診査も必要ですよね。(ここは歯科医師のパート)
そして、患者さんそれぞれのリスク。
口腔内だけではなく、口腔内環境へ影響を及ぼす可能性がある
ブラッシング習慣や食習慣。
あらゆる視点から患者さんのお口の中を観察し、評価していきます。
そのうえで、必要な処置を判断していくのです。
そしてもう一つ大切なのが、
INFECTION CONTROL=感染管理。
歯科医療では、患者さんの安全を守るための感染管理は欠かすことができません。
「何をするか」を考える前に、
「患者さんのお口の中で何が起きているのかを正しく把握する」
そして、
「安全な環境で処置を行う」
ことからGBTは始まります。
GBTを進めていく上で、最初に肝心なのは口腔内細菌を可能な限り減らした状態で
診療を進めていくことです。
その理由はAIRFLOW®️やPIEZON®️PSを使用する前に、歯科処置で発生するエアロゾル中の細菌量を有意に減少させることが大切です。
GBTのリアルではこの写真のBACTERX®️ PROを使用することが推奨されているのですが
日本では残念ながらこのマウスウォッシュは発売されておりません。
代わりとなる洗口液などを用いてうがいをする必要があります。
(当院ではモンダミンハビットプロやリステリンを使用しています)

02 DISCLOS|見えないバイオフィルムを「見える化」する。
次のステップは、
DISCLOSE(染めだし)
です。
バイオフィルムは、普段は目で確認することが難しいもの。
だからこそ、染め出しによってバイオフィルムを「見える化」します。
そして、ここで大切なのは、
歯科医療者だけが見るのではない
ということ。
患者さん自身にも見てもらいます。
「ここに残っていたんだ」
「ここが磨きにくいんだ」
と、自分のお口の状態を知ってもらう。
GBTでは、この「見える化」がその後のステップにつながっていきます。
自分の歯に繁殖したバイオフィルムなんて見たくないですよね。
でもここで逃げずに見るんですよ。
そう、自分の歯に注目してみましょう。
バイオフィルムを染色すると
3日以上繁殖し続けている成熟したバイオフィルムは濃い紫色に。
うすい紫色は3日未満、比較的新しいバイオフィルムと判定できます。
この写真のように歯肉炎や歯周病を進行させるバイオフィルムたちは
歯肉の近くに存在しているのです。
このバイオフィルムをしっかりと日々の歯磨きで除去する必要があるのです。

03 MOTIVATE|患者さん自身が、自分のお口を守るために行動すべきこと
DISCLOSEでバイオフィルムを見えるようにしたら、
MOTIVATE
です。
患者さんと一緒に現在のお口の状態を確認し、
「どこにバイオフィルムが残っているのか」
「なぜそこに残るのか」
「どうすればセルフケアを改善できるのか」
を共有します。
私はここがGBTの好きなところです。
ただ「きれいにしてあげる」のではなく、
患者さん自身に、自分のお口の状態を知ってもらう。
そして、
自分の歯を自分で守る力を持ってもらう。
プロフェッショナルケアとセルフケア。
その両方があってこそ、長期的な予防につながります。
バイオフィルムを除去するにはどんな歯ブラシがよいのか。
歯ブラシをどのように動かしたらいいのか。
問題点をひとつずつ改善していくために
歯科医院の役割は患者さんが自分自身の歯としっかり向き合うための
サポートなのです。
【過去ブログ】
04 AIRFLOW® MAX|バイオフィルムを効率的に除去する。
そして、ここで登場するのが、
AIRFLOW® MAX
です。
AIRFLOW® MAXを用いて、エリスリトールパウダーを使用し、バイオフィルムやステインを効率的に除去します。
GBTでかかせないのがこちらのPLUSパウダーです。(主成分はエリスリトール)
このパウダーは14μmの細かなパウダーで、歯を傷つけることなく、歯の表面だけではなく
歯周ポケットの中に繁殖するバイオフィルムもねこそぎ除去してくれるのです。

ただし、ここはもう一度強調したい。
AIRFLOW® MAXを使うこと=GBTではありません。
AIRFLOW® MAXは、GBTの04番目のステップです。
その前に、
ASSESS AND INFECTION CONTROL
DISCLOSE
MOTIVATE
があります。
だからこそ、
「AIRFLOW® MAXを使っているからGBT」
ではないのです。
8つのステップ全体でGBTです。
05 PERIOFLOW®|歯肉縁下のバイオフィルムへ。
次は、
PERIOFLOW®
です。
歯周病の患者さんなどでは、歯の表面だけではなく、歯肉縁下にもバイオフィルムが存在します。
そこで、必要な症例に対してPERIOFLOW®を用いて歯肉縁下のバイオフィルムをターゲットにします。
ここでも大切なのは、
「全員に同じ処置をするわけではない」
ということ。
最初のASSESS AND INFECTION CONTROLで患者さんのお口の状態を診査し、
「この患者さんには何が必要なのか」
を判断したうえで行います。
PERIOFLOW®️を用いるかどうかの診断には歯科医師によるレントゲン診査が必要です。
歯周ポケット値だけでは判断することはできません。
歯周組織の状態を歯科医師と歯科衛生士が
PERIOFLOW®をどこに使用するのかを術前にしっかりと共有することがとても大切です。
06 PIEZON® PS|残った歯石を除去する。
そして、
PIEZON® PS
です。
ここで、バイオフィルムと歯石の違いが重要になります。
AIRFLOW® MAXによってバイオフィルムを除去しても、硬く付着した歯石まで同じように除去できるわけではありません。
そこでPIEZON® PSを使用し、必要な歯石を除去します。
つまり、
バイオフィルムにはAIRFLOW® MAX。(固着した歯石の上にもバイオフィルムはたくさん繁殖しています。)
必要な歯肉縁下バイオフィルムにはPERIOFLOW®。
歯石にはPIEZON® PS。
それぞれの目的に合わせて、適切なインスツルメントを使い分けます。
これもGBTの大切な考え方です。
07 CHECK|本当にきれいになったのか、最後に確認する。
処置をしたら終わり。
ではありません。
CHECK
です。
バイオフィルムは残っていないか。
歯石は残っていないか。
必要な部位の処置はできているか。
患者さんのお口の状態をもう一度確認します。
「何をしたか」ではなく、「どうなったか」を確認します。
08 RECALL|一度きれいにして終わりではない。
そして最後が、
RECALL
です。
どれだけ丁寧にバイオフィルムを除去しても、患者さんは毎日生活をしています。
食事をすれば、またバイオフィルムは形成されます。
セルフケアの状態も変わります。
だからこそ、予防は一度で終わりません。
今回のお口の状態を確認し、
次はいつ来院する必要があるのか。
何を改善していくのか。
どうやって健康な状態を維持していくのか。
患者さん一人ひとりに合わせて次回のRECALLにつなげます。
8つすべてがつながって、GBTになる
現在のGBT Compassは、
01 ASSESS AND INFECTION CONTROL
↓
02 DISCLOSE
↓
03 MOTIVATE
↓
04 AIRFLOW® MAX
↓
05 PERIOFLOW®
↓
06 PIEZON® PS
↓
07 CHECK
↓
08 RECALL
という8つのステップで構成されています。
私は、この順番にも大きな意味があると思っています。
いきなり機器を使うのではない。
まず診査する。
見える化する。
患者さんと共有する。
そして、必要な処置を行う。
最後に確認し、次の予防につなげる。
だからGBTは「クリーニング」ではなく、一つのプロトコルなのです。
そして、この8つのステップを見失わないために、私はGBT Compassを「羅針盤」だと考えています。

SDA Trainerとして、私が「正しく伝える」ことを大切にする理由
ここからは、少し私自身の話をさせてください。
私は、もともと歯科衛生士となり、その後、歯科医師になりました。
そしてスイスでSwiss Dental Academy、通称SDAのトレーニングを受け、現在はSDA TrainerとしてGBTを伝える立場にあります。
だからこそ、GBTについて発信するとき、私は自分自身に問いかけるようにしています。
「これは、本当にGBTの本質を伝えているだろうか?」
SDA Trainerだからこそ、曖昧にしたくない
私は、
「エアフローは気持ちいいですよ」
「歯がツルツルになりますよ」
「着色が取れますよ」
ということだけを伝えたいわけではありません。
もちろん、患者さんにとって大切なメリットです。
でも、それだけではGBTの本質には届きません。
私が伝えたいのは、
「なぜ、この患者さんにこの処置をするのか」
そして、
「この患者さんのお口を、これからどう守っていくのか」
という考え方です。
GBTは、機械を使うためのプロトコルではありません。
バイオフィルムを中心に患者さんの口腔内を評価し、予防を体系的につなげていくためのプロトコルです。
だから私は、技術だけではなく、その背景にある考え方まで伝えたい。
それがSDA Trainerとしての私の役割だと思っています。
「GBT」という名前だけが広がればいいわけではない
私は、GBTが日本でもっと広がってほしいと思っています。
「歯が痛くなったから歯医者へ行く」
だけではなく、
「痛くならないように歯を守る」
という考え方が、もっと当たり前になってほしい。
でも、
GBTという名前だけが広がればいいとは思っていません。
私が望んでいるのは、
GBTの本質が正しく広がること。
そして、
「エアフロー」という言葉だけが一人歩きするのではなく、
何の機器を使っているのか。
どのパウダーを使っているのか。
どのようなプロトコルで処置しているのか。
患者さんにも知っていただくこと。
それも、予防医療の一部だと私は考えています。
医療だからこそ、「言葉」を正しく使いたい
医療では、患者さんに分かりやすく伝えることがとても大切です。
でも同時に、
分かりやすさのために、正確さを失ってはいけない。
私はそう考えています。
「エアフロー」という言葉が一般的に使われることで、エアポリッシングという予防処置を知る人が増える。
それ自体は、とても良いことです。
でも、
EMSのAIRFLOW®
と、
他社のエアポリッシングデバイス
は、同じものではありません。
だからこそ、
「エアフローを受けた」
だけではなく、
「何を使って、どのような処置を受けたのか」
まで知っていただきたい。
そう思っています。
私がSDA Trainerとして守りたいもの
私が守りたいのは、特定の機械の名前だけではありません。
GBTという考え方そのものです。
GBTが日本で広がっていくことは、とても嬉しい。
でも、GBTという名前が広がるほど、
「GBTとは何なのか」
を正しく伝える責任も大きくなると思っています。
だから私は、
「なんとなくGBT」
を増やしたいわけではありません。
GBTの8ステップを理解し、その意味を理解し、患者さんのために実践できる人を増やしたい。
それが、SDA Trainerとして私が目指していることです。
東大和市から、世界へ。
TOMOE DENTAL CLINICは、東京都東大和市にある歯科医院です。
私たちが目指しているのは、
「エアフローが受けられる歯科医院」
だけではありません。
世界で共有されているGBTの考え方を、
正しく学び、
正しく実践し、
正しく伝える。
そして、一人でも多くの患者さんに、
「自分の歯を守る」という選択肢
を知っていただきたいと思っています。
GBTには、歯科医院と患者さんの関係を変える力がある。
そして、日本の予防歯科を変えていく可能性がある。
私はそう信じています。
だからこそ、その可能性を正しく伝えていきたい。
GBT Compassを見失わない
最後に、もう一度この8つのステップを。
01 ASSESS AND INFECTION CONTROL
診査・感染管理
02 DISCLOSE
バイオフィルムを見える化する
03 MOTIVATE
患者さんと共有する
04 AIRFLOW® MAX
バイオフィルムを除去する
05 PERIOFLOW®
必要な歯肉縁下のバイオフィルムを処置する
06 PIEZON® PS
歯石を除去する
07 CHECK
結果を確認する
08 RECALL
次の予防につなげる
この8つが一つにつながっている。
だから、
GBT Compass。
東大和市から世界へ。
TOMOE DENTAL CLINIC
SDA Trainer / GBT Clinician









